要点まとめ
- メンタル不調の休職は長期に及ぶこともあり、小さい会社ほど1人の離脱の影響が大きい
- 失うのは給与相当だけではありません。代替要員・残されたメンバーの負荷・採用費・取引への影響まで含めて考える必要があります
- 予防にかかる費用(ストレスチェック+面接指導)と、休職によって生じる費目を並べて考えると、対策を「福利厚生」だけでなく「リスク管理」としても検討できます
1. 休職1件のコストを分解する
「休職中は給与を払わないからコストは小さい」は誤解です。実際に発生するものを分解します。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 直接人件費 | 休職中も社会保険料の会社負担は続きます。傷病手当金は健保から出ますが、会社の負担がゼロになるわけではありません |
| 代替コスト | 派遣・外注・残業での穴埋め。専門性が高い人ほど割高になります |
| 周囲への波及 | 残されたメンバーの業務負荷増 → 連鎖的な不調・離職が大きなリスクです |
| 生産性の低下 | 休職前の不調期間(パフォーマンス低下)と、復職後の慣らし期間 |
| 採用・育成費 | 退職に至った場合の採用費+戦力化までの教育期間 |
| 管理コスト | 休職手続き、復職判定、主治医・本人とのやり取りにかかる経営者・管理部門の時間 |
従業員10〜30人の会社では、1人の長期離脱が特定業務の停止や納期遅延に直結することも多く、金額に表れない信用面の影響も無視できません。
※具体的な金額は給与水準・職種で大きく変わるため、本記事では一般的な金額の断定はしません。自社の数字で見積もる場合は、上の表に自社の月額人件費と想定休職月数を当てはめてください。
2. 「不調の早期発見」が効く理由
メンタル不調は、早い段階(睡眠・食欲の乱れ、疲労感)で気づき、働き方を調整することが大切だとされています。限界まで我慢してからの休職は、長期に及ぶこともあります。
つまりコスト対策で大切なのは「休職者への対応」ではなく「休職に至る前の検知と調整」です。ここで効くのが:
- 年1回の全員スクリーニング(ストレスチェック)— 本人も気づいていない負荷を可視化
- 高ストレス者への医師面接 — 残業制限・業務調整という「働き方の処方箋」(意見書)で、働きながらの回復を支える
- 職場要因の改善(集団分析)— 特定の部署から不調者が続く、という構造そのものを直す
3. 予防コストとの比較の考え方
予防側の年間コストは「基本料+受検料×人数+面接指導料×件数」で考えられます(当サービスの料金は料金ページをご覧ください)。自社の受検者数と、想定する面接指導の回数を当てはめて、上の表の費目と比べてみてください。
比較のポイントは「休職を1件防げたら元が取れるか」ではありません。休職の長期化を1件でも短縮できるか、連鎖離職を1件でも防げるかという視点でも考えてみてください。
4. 経営者が始められる3つのこと
- 勤怠データで長時間労働の常連を把握する(長時間労働は不調につながる大きな要因のひとつです)
- ストレスチェックを適切な時期に実施し、高ストレス者が医師につながる導線を確保する
- 「不調=評価が下がる」と思われない文化をつくる(申出や相談への不利益取扱い禁止の明言)
よくある質問
Q. 休職者が出てから対策を始めても遅いですか? A. 遅くありません。復職支援と並行して、残りのメンバーの状態把握(ストレスチェック・面接)を行うことが、連鎖を防ぐための大切な打ち手になります。
Q. 傷病手当金があるから会社の負担は小さいのでは? A. 傷病手当金は本人の生活保障であり、会社側の社会保険料負担・代替コスト・波及コストは残ります。
Q. 対策費用は経費になりますか? A. ストレスチェックや面接指導の委託費用は、一般に福利厚生費等として損金算入されます(具体的な処理は税理士にご確認ください)。